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何かしらの疾患が原因で発症する別の病気を合併症と呼びます。人工透析を行っている場合にも合併症に注意する必要がありますが、この場合の合併症は大きく「短期的合併症」と「長期的合併症」という種類に分けられます。
血液透析を続けていると合併症が見られることがあります。早期発見・早期対応につなげるためにも、どのような合併症が起こるかをよく理解し、気になることがあればスタッフへ速やかに報告しましょう。
参照元:「合併症について」/一般社団法人全国腎臓病協議会公式サイト
透析導入期によく見られる合併症の1つです。症状は、透析中から透析終了後12時間以内に見られる腹痛や吐き気、嘔吐などです。透析によって、血中の毒素は除去されますが、尿毒素が取り除かれにくい脳との間に濃度差が生じるため起きると考えられています。透析に慣れてくると、起こりにくくなるとされています。
透析を始めた当初は、多くの方に高血圧が見られます。頭痛や吐き気、イライラ、熟睡できないといった症状が見られやすいです。
高血圧を起こす主な原因は、塩分や水分を摂り過ぎ、十分に排泄されず体液量が増加することです。体重増加に注意が必要です。また、高血圧は心臓病や動脈硬化、脳卒中などの原因にもなります。
低血圧は、発生頻度の高い合併症です。透析の除水による循環血液量の減少にプラスして、心機能障害や血管収縮機能の低下が生じるのが原因です。
特に、血圧低下が起きやすい状況なのは、糖尿病や低栄養、心機能障害、貧血、加齢などが挙げられます。自覚症状として、あくびや頭痛、吐き気、動悸、冷や汗などがみられます。
対策としては、ドライウェイトを上げる、バランスのよい食事を心がける、透析時の除水量を調節するなどです。
腎不全の状態になると、腎臓内から分泌されるエリスロポエチンと呼ばれる造血ホルモンの量が低下するため、貧血を起こしやすくなります。
また、血中の尿毒素が増えると、出血しやすくなるほか、赤血球の寿命が短くなることも大きく関わっているといわれています。
見られやすい症状は、疲れやすさや手足のだるさ、階段昇降時の動悸、息切れなどです。貧血は、鉄材やエリスロポエチンを投与すると改善しますが、栄養バランスのとれた食事や運動などを心がけることも重要です。
透析を受けている方は、一般的に抵抗力が低下しているため、感染症にかかるリスクが高いです。穿刺部から、細菌が侵入して起きるシャント感染、尿量低下に伴う尿路感染、風邪をこじらせて起きる肺炎、輸血によるウィルス感染などがあります。
予防として有効な方法は、シャント部を清潔に保つのはもちろん、バランスのとれた食事を心がけることです。
腎不全の状態になると、リン(P)が腎臓から排泄されなくなり、高リン血症の状態になります。リンが上昇すると、腸でカルシウム(Ca)の吸収率が低下し、血中のカルシウム濃度が下がってしまいます。
そのため、カルシウム濃度を上げようと、副甲状腺という部位から副甲状腺ホルモン(PTH)と呼ばれる物質を分泌します。副甲状腺ホルモンは、骨を溶かして血中のカルシウム濃度を上げようとする働きがあります。
上記の現象が続くと、もろくて骨折しやすい状態になるため注意が必要です。
骨の薬を服用して、高リン血症を予防していくことが大切です。その他には、リンが多く含まれているたんぱく質の摂取量をコントロールしていく必要があります。
長期間透析を続けていると「アミロイド」と呼ばれる物質が関節や骨などに付着します。それによって、関節や骨、肩、首などの痛みやしびれ、麻痺といった症状が見られるため注意が必要です。
痛みや痺れなどが強く見られる場合には、手術療法が行われることがあります。予防として有効な方法は、手首や指の屈伸運動(関節の働きを保つため)や、十分な透析の実施です。
フルーツや生野菜、肉、魚など、カリウムが豊富に含まれている食品を過剰摂取すると発症します。主に見られる症状は、手足のしびれや口のしびれ、脱力感、味覚障害、知覚異常などです。血中のカリウム値が高いと、脈が乱れ、心臓が停止する可能性があるため、十分注意しなければなりません。
日頃から、カリウムの多い食品を控えるのはもちろん、野菜は小さくカットし、たっぷりのお湯でゆでてから調理するなど、調理法を工夫することも大切です。
食事や水分の制限により便秘になりやすい傾向があることから、例えば朝食後に排便の習慣をつける、適度な運動を心がけるなど、便秘にならないような習慣を心がけましょう。また、カリウムが少なく食物繊維が多い食事を心がけるといった方法もあります。
食事において注意するべき栄養として、例えばリンが挙げられます。透析ではリンの十分な除去が難しいことから、まずは食事療法でリンを含む食品を控えることを心がけましょう。また、不均衡症候群を予防するためにもたんぱく質を摂りすぎないように注意することも大切です。
人工透析を受ける場合には運動習慣を意識することも大切です。無理のない範囲で、例えば1日30分程度歩くことにより、足の血流改善が期待できます。
透析を始めると体の痒みを感じることがあるため、規則的に入浴を行うことやスキンケアを行い、保湿を心がけることも大切です。また、足浴を行うことでも足の血行促進が期待できます。
フットケアを習慣にするのもおすすめです。フットケアを行う際には、気になる症状がないかといった部分まで確認することを心がけましょう。特に足の裏まで手鏡を使って隅々まで確認を行うようにします。
合併症とは、「何かしらの疾患が原因となって発症する別の病気」を指します。ここでは、人工透析を受ける場合に知っておきたい、合併症の基礎知識についてご紹介していきます。
短期的合併症は、透析そのものが原因となる合併症です。体が透析に慣れていないことから起こるため、透析導入期によくみられます。透析を行うことにより血液中の水分や老廃物は急激に除去されるものの、脳の細胞内の老廃物は除去されにくいことから、血液と脳など細胞の中との間に濃度の差が生じてしまうことが原因で起こります。頭痛や吐き気、嘔吐、筋肉のけいれんなどさまざまな症状がありますが、体が透析に慣れることによって起こりにくくなる症状も見られます。
人工透析を長期的に続けている場合に起こる合併症を指します。これは、透析療法では腎臓の機能を完全に代行できるわけではないためです。長期的合併症としては、心不全や脳血管障害、高リン血症、高カリウム結晶、貧血、骨障害、透析アミロイドーシス、感染症、多嚢胞化萎縮腎といったものがあります。
長く透析を続ける中で、透析では十分に除去できない老廃物(β2ミクログロブリン等)が体に蓄積し、骨や靭帯、腱などにアミロイド繊維が沈着することで痛みを引き起こすのが透析アミロイドーシスと呼ばれる合併症です。
そのほかに、手首の腱にアミロイド繊維が溜まることによって起こる手根管症候群や、指を動かす筋肉の腱にアミロイド繊維が溜まることによってバネ指といった症状が見られるケースもあります。
透析を受けている患者さんの場合、尿が出ないことから水分や塩分が体に溜まってしまうため、これを循環させるために心臓に大きな負担がかかることになります。このように、心臓が働きすぎの状態になることから心臓の機能が低下してしまい、心不全に至るケースも見られます。
人工透析を受けている場合には、さまざまな要因により免疫力が低下しています。そのため、感染症にかかりやすく治りにくい状態となっています。免疫力が低下する原因は、尿毒素が体内に蓄積することや貧血などが挙げられます。
人工透析と合併症は切っても切れない関係にありますが、東京のクリニックではそのリスクを極力減らすために様々な施策を行っているところが増えています。
また患者さんの側も合併症の危険を十分に理解し、よりリスクを減らすことができるクリニックを選ぶことが重要です。